2025年6月8日
ヤニス・バルファキス氏の通訳を務めたときの動画です。
緊縮がどのようにファシズム拡大に加担するのか、詳細に語っています。 緊縮をやめ、れいわ新選組の積極財政を実現させるしかありません。
対談全編はこちら
【日本の財政は本当にギリシャより悪いのか!?】~ ギリシャ国民のため、緊縮と闘った経済学者・元財相ヤニス・バルファキスが語る!~
以下、要約です。
(長谷川) 皆さんこんばんは、ヤニス・バルファキスさん今日はご参加、本当にありがとうございます。
(ヤニス) 喜んで!
(長谷川) れいわ新選組、参議院政策委員の長谷川ういこです。
(長谷川) そして通訳はですね、同じくれいわ新選組のメンバーで、元ユネスコの職員である米村明美さんです。
(長谷川) れいわ新選組は、バルファキスさんが立ち上げた政治運動であるDiEM25 やプログレッシブインターナショナルに非常に近い理念や政策を持った政党です。
(長谷川) 私は2019 年に、今日のパネラーである朴勝俊(パクスンジュン)さんと一緒にヤニスさんの回顧録「黒い匣」を明石書店から翻訳出版しました。そのご縁で今日はインタビューを引き受けていただきました。
(長谷川) 「黒い匣」は、ヤニスさんの回顧録なんですが、ヤニスさんはギリシャの経済危機が最も深刻だった2015 年に財務大臣として、緊縮を押し付けてきた、ギリシャの人々の尊厳を踏みにじったトロイカと最前線で戦ってこられました。
「黒い匣」には、その戦いが克明に記されています。私たちはその頃のギリシャの人々の苦しみやユーロ圏が抱えていた問題、そしてバルファキスさんたちのチームがそれをどのように打ち破ろうとしていたのか、それをこの本を通じてよく理解しているつもりでおります。
(長谷川) しかしですね、日本では先日、石破茂首相が「日本の財政は間違いなく極めてよろしくない、ギリシャよりもよろしくない」と発言しました。で、この発言はですね。恥ずかしいことに世界中に報道されたわけです。
(長谷川) 私はこの発言が、経済に関する首相の理解の浅さを露呈していると、国営放送の討論会 NHK の討論会で批判しました。また、ギリシャの人々に対しても非常に失礼な発言だと怒りを覚えています。
(長谷川) 振り返れば、十数年前、当時の民主党政権の野田義彦首相も「ギリシャは対岸の火事ではない」と言って、消費税の増税を決めました。これが現在まで続く日本の経済停滞につながっています。
(長谷川) それでは、早速ヤニスさんにお伺いしたいと思います。ヤニスさん、回顧録の序文の中で日本とギリシャは全く違うと述べておられますが、今回の石破首相の発言をどのように捉えておられるでしょうか。是非、日本の視聴者にお話いただきたいと思います。
(ヤニス) 2つポイントがあります。1 つ目は、親切な優しいコメントですけれども、長谷川さんが言われたように、首相はちゃんと経済を理解してないということです。
(ヤニス) 2つ目の理由はもっと現実的なもので、私が本当に信じているものですけれども、どの国の首相も、人々に対する階級闘争を仕掛ける時には、まず自分の国とギリシャとを比較するということです。
(長谷川) はい、ヤニスさん、日本の首相の発言に関して、世界中でもやはりギリシャと自国を比較している、ギリシャと自分の国を比較するものだと仰いましたけれども、やはりそれをギリシャが非常に経済的に、金融機器の時に破綻した、破綻寸前だったからだと思いますけれども、それはヨーロッパ、各国でも同じ状況なんでしょうか?
(ヤニス) では、これまで述べたことを3つのステップで説明しましょう。最初のステップは、なぜ日本がギリシャと根本的に異なるのかです。これが最初のステップで、その理由を説明します。 日本は巨大な貿易黒字国、国際収支黒字を有する国です。つまり、国家としては、支出するよりも多くの外貨を手に入れているのです。
これが第一点です。
第二点。日本の債務残高が大きいといっても、それは自分たちに対するものです。つまり、政府は債務の大部分を、自国民に対して負っているのです。年金基金や個人貯蓄などですね。これらの条件はいずれも、ギリシャの場合には当てはまりません。
まず、過去数十年間、現在に至るまで、ギリシャは経常収支赤字でした。つまり、民間部門と公共部門の両方が、自国が輸出するよりも、はるかに巨額の外国の製品やサービスを購入していたのです。
次に、ギリシャは外国に対する債務を抱えていました。つまり、公共債務の大部分を外国に負っていたのです。そして、これが最も重要な点です。なぜ日本の首相が日本とギリシャを比較することがとんでもないことなのか。ありえないことなのか。私たちは自国通貨を発行していませんでした。私たちは、日本とちがって、自分で発行できない通貨で借金をしていたのです。したがって、あなたの首相が完全な愚か者でない限り、彼は嘘をついています。私は愚か者ではないと思います。彼は日本とギリシャを比較する際に、完全に、完全に嘘をついているのです。通訳が済んだら説明します。
(朴) ちょっと補足してよろしいでしょうか? 現在日本はエネルギーが高くなって、貿易そのものは少し赤字が出ているのですけど、経常収支の方で黒字が続いています。オーディエンスの方からも質問があったので、私の方でひとつ補足の質問をしたいんですけども、米村さん通訳お願いします。
(朴) 今のポイントは通貨主権ですね。monetary sovereignty、通貨主権を持っている日本と、ユーロに入ってしまって通貨主権を失ったギリシャ、そこが多分1番違うと仰ったんだと思います。つまり、ユーロはギリシャにとって自国通貨ではないということだと思うんですが、そこが1番違うというところだと思うんですが。
だとすると、私どもが、ちょっと関心がありますのは、ドイツもいわばユーロに加盟したことによって通貨主権を失ってしまってですね、ドイツもいわば地方自治体のようになっていませんか? ということなんですね。
ですから、ドイツの財政状況ってすごく健全だって言われているんですけれども、実際のところはドイツでさえも日本よりも状況が悪いっていう理解も成り立つように思うんです。実は日本の左派であれ学者であれ、ドイツがすごく健全でドイツのように健全財政をすべきだっていう風に考えている人がとても多いので、その辺りのお考えも聞かせていただけますでしょうか。
(ヤニス) そうですね、ドイツを真似るべきではありません。ドイツは失敗しています。ドイツは産業空洞化が進んでいるのです。そして、失敗した権威主義国家へと変貌しつつある。日本がそうなる必要がありますか?
つまり、どの国にも問題があるのです。日本にも問題はあるでしょうが、ドイツのような問題はありません、ないです。
スンジュンさん、たしかに、ギリシャと日本の根本的な違いは、ギリシャが通貨主権を失ったことです。ですが、それだけではありません。
もう一つの重大な点は、先ほども言ったように、日本とは違って、国際貿易と資本の流れにおいて、ギリシャは常に赤字があったということです。
第二の点は、ドイツも同じです。ギリシャやドイツの債務の多くは、自国民や自国の機関によって保有されているものではありません。ドイツも同じ問題を抱えています。ドイツの公的債務は外国の機関によって保有されています。そして、この…
根本的に、日本はドイツやギリシャと比べて、特権的な立場にあります。日本は遙かに特権的です。説明しましょう、なぜ石破首相たちがギリシャと日本の比較に依存しているのか。
その理由は、東京の権力者たちが非常に興味を持っていることが一つあるからです。その一つは、大多数の低所得層や労働者階級、中間層から、富裕層へと、いかにして所得を吸い上げるかです。それが彼らの関心事です。
彼らは、緊縮策によって、それを実現できると知っています。皆さんは消費税について言及しました。消費税を引き上げれば、所得税が減らせます。所得は貧困層から富裕層へと移転するのです。彼らは公衆衛生や公教育への支出を削減したがります。なぜか?
富裕層は貧困層が病院で治療を受ける費用を支払いたくないし、貧しい子供たちが大学に行く費用を支払いたくないからです。
先ほども述べたように、これは階級戦争です。そしてこう聞かされるでしょう。財政政策においては保守的である必要がある、財政状況を安定させる必要がある、財政を均衡させる必要がある、と。
違います、財政を均衡させる必要はありません。
なぜなら、政府が財政を均衡させ、財政赤字を解消すれば、人々が赤字を抱えることになるからです。
誰かが赤字を抱えなければならないのです。それはよく理解できるでしょう。全員が黒字になることはできません。日本が世界に対して大きな黒字を抱えているときに、政府も貿易黒字を抱えたり均衡財政を実現させると、日本の人々が赤字を抱えることになります。
そして、当然ながら、その赤字を抱えるのは富裕層ではありません。人々の60%です。これが単なる経済論議ではないという理由です。
これは皆さんの国の未来に関する問題です。そして、皆さんの国の未来には、皆さんの行動が必要です。
それで、皆さんが政治の場で、超富裕層の政治家たちに対抗する行動を起こしていることを、私は非常に嬉しく思います。日本の大多数の人々のために。赤字を抱えて苦しんでいる被害者のために
(長谷川) ありがとうございました。少々お待ちください。
(朴) ちょっと補足させてもらっていいですか? 基本的な会計式なんですよね。「政府の黒字」と「民間の黒字」と、あと「外国の黒字」って必ず、金融取引の関係は、金融資産の関係は、合計でゼロになります。だから「誰かの赤字は誰かの黒字、誰かの債務は誰かの資産」ということなんで、政府が黒字になると皆さんが赤字になるんだという、そういう当たり前のことを説明されてました。
(長谷川) はい。ですから、特にギリシャなんかは貿易では統一通貨なので、常に赤字になってしまうということで、非常に苦しい状況に置かれている。これはドイツが、日本で言うと東京のような、すごく独り勝ちのように見えるんですが。とはいえ、やはり日本よりははるかに悪い状況にあるということをヤニスさんが説明してくれています。で、先ほど言われた 1番重要なところですね。やはり債務をなくしてしまおう、つまり赤字をなくそうということが良いように聞こえるんですが、そうではなくて、赤字を無くすということ自体が国民を苦しめることなんだということを、ヤニスさんがご自身の経験からも、強くそれを言っていただいているということです。
(長谷川) ではですね。続いて、ヤニスさんに皆さんからもたくさんの質問いただいてますので、それを踏まえて少しご質問したいと思います。